個人が使う印鑑には、実印・銀行印・認印の三種類があります。皆様は普段の生活の中でそれぞれ適切な使い分けができているでしょうか。
この記事では、今更聞けない実印・銀行印・認印の違いを分かりやすく解説していきます。間違った使い方をして大切な印鑑や個人情報を悪用されないよう、印鑑についての知識をぜひ身につけてくださいね。
実印とは
個人の持つ印鑑で、最も大切な実印についてご紹介します。
印鑑登録をした印鑑
実印とは、お住まいの市区町村の役所で印鑑登録をした印鑑のことを指しています。個人の印鑑としては唯一公的な機関に登録するもので、印鑑登録をすることでその印鑑に一定の法的効力を持たせることができるのです。
実印登録をおこなった役所では、印鑑登録証明書という書類を発行できるようになります。印鑑登録証明書は不動産の購入やローン契約など重要な契約時に、契約締結が本人の意思によるものであることを証明するものとして提出が必要な資料となっています。
実印のサイズ
実印は専門の印鑑業者に作成を依頼して作ります。その時に作成する実印のサイズについては、男性であれば直径15mm〜18mmのもの、女性であれば直径13.5mm〜15mmのものが押印しやすいサイズとして知られています。市町村によって規定は異なりますが、一辺が10mm以上25mm以内の正方形に収まるサイズであれば、実印としての印鑑登録をおこなうことができます。
実印の刻印(印影)
実印の刻印(印影)についてですが、男女ともフルネームを刻印するケースが多いです。ただし、女性の場合は苗字が変わることもありますので、未婚の女性の場合に名前のみで作成する方も一定数います。書体についてもいくつかありますが、印相体が最も選ばれる書体です。印相体は読みづらい書体であるため複製が難しく偽造防止に効果があり、かつ縁起の良い書体とされています。
実印の素材(印材)
実印の素材については、耐久性があり捺印しやすい素材が適しています。役所に登録をするため破損しやすい素材ではすぐ使えなくなりますし、印鑑証明書との照合をするため捺印の際に擦れてしまうような印鑑ですと使い物になりません。古くから親しまれる象牙や水牛の角といった素材に加え、近年人気な素材としてはチタンがあります。耐久性があり手入れがしやすく、金属アレルギーが少ないため男女問わず人気の印材です。
実印の使用用途
実印の用途としては、重要な契約の際に使用されます。具体的には、住宅の売買取引や住宅ローン契約、各種保険の加入契約や遺産の相続時など、法律で書面での契約が規定されているケースです。契約書への捺印だけでなく印鑑登録証明書とあわせて提出することで、本人の意思による契約であることを証明します。
実印を変更する場合
破損などで実印を変更する場合、印鑑登録をした役所にて改印手続きをおこないます。印鑑の廃止登録と新しい印鑑の新規登録の手続きをおこないます。手続きに必要なものは、印鑑登録証、破棄する印鑑、新しい印鑑、本人確認書類です。窓口に設置してある印鑑登録廃止申請書と印鑑登録申請書に必要事項を記入し提出します。
実印を紛失した場合
実印を紛失した場合は、悪用の恐れもあるので気づいたら速やかに手続きをするようにしましょう。まず始めにおこなうべきは、役所への紛失届です。印鑑証明書を発行できなくする手続きで、悪用のリスクを防止します。警察にも紛失届を提出し、一通りの応急処置をしてから、紛失した実印を使用して契約した関係各所に紛失の旨を連絡します。必要なら新たな実印を作成し、再登録を行ってください。
銀行印とは
銀行口座開設の時に必要となる銀行印についてご紹介します。
銀行に届出をする印鑑
銀行印とは、その名のとおり銀行に届け出をするための印鑑です。口座の開設や窓口での振替・引き出しをおこなう際に使用します。ネットバンキングの普及で使用頻度は少なくなりつつありますが、クレジットカードの申込時の引き落とし口座登録など依然として使う機会は多くあります。
銀行印のサイズ
銀行印の場合も特に規定はありませんが、金融機関によっては条件が定められているケースもあります。印鑑の専門業者では12.0mm〜13.5mmの銀行印を用意していますので、推奨のサイズから大きく逸脱しないものを選ぶようにしましょう。
銀行印の刻印
銀行印の刻印ですが、姓を刻印することが多いですが、お子様などでは名を刻印することもあります。一般的には姓または名のどちらかを刻印します。
書体は、印相体や篆書体など文字を崩した、読みにくい書体を選ばれることが多いです。難読な書体を選ぶことで、偽造や不正を防止する効果があります。
銀行印の素材
銀行印の素材としても、耐久性があり、かつ見た目に高級感がある素材が好まれています。定番は天然黒水牛の印鑑で、漆黒の天然素材の外観には高級感があり、しっとりとした使用感で押印もしやすい素材です。また実印同様チタンも耐久性がありおすすめです。
銀行印の使用用途
銀行印は、口座開設など窓口での手続きなどで押印します。一部の銀行では印鑑の登録が必要ないケースがありますが、依然多くの金融機関では銀行印の登録が求められます。
銀行印を変更する場合
銀行印を変更する場合、印鑑を登録している銀行にて手続きをおこないます。現在登録中の印鑑、変更したい新しい印鑑、本人確認書類、通帳などを持参しましょう。
銀行印を紛失した場合
銀行印を紛失した場合、実印のケースと同様、気づいたらすぐに手続きをするようにしましょう。銀行へ銀行印の紛失の旨を連絡し、通帳と銀行印での手続きをすぐに停止するよう依頼します。その後で新しい印鑑を改めて登録しましょう。
認印とは
続いて、日常で最も押印することの多い認印についてご紹介します。
印鑑登録をしていない印鑑
認印とは、役所や銀行に登録手続きをせず、日常で使う個人の印鑑のことを指しています。実印は役所に登録し、銀行印は銀行へ登録しますが、認印はいずれの機関に登録することなく使用できる印鑑です。個人の印鑑としては最も使用頻度の多い日常使いの印鑑と言えます。
認印のサイズ
認印はどの機関にも登録しないため、規定されているサイズはありません。ですが、他の個人印鑑と区別するために、多く採用されているサイズがあります。10.5mm〜12mmの間で持ちやすい・押しやすいサイズが選定されています。サイズについては男女の違いはありません。
認印の刻印
認印の書体は、古印体や楷書体など読みやすい書体が選ばれる傾向にあります。理由としては、認印の使用目的が誰が確認したかを分かりやすく示すためのものであるからです。第三者から見て誰が確認したのか分からないと、認印としての役割を果たせないということです。
認印の素材
認印の素材としては、安価ながらも耐久性のあるものが好まれます。定番としては綺麗な木目が特徴の本柘、水牛の角を漆黒に染めた黒水牛、人と被らないデザインに仕上げられるアクリルなどが認印の素材として採用されています。
認印の使用用途
認印は日常使いをする印鑑であるため、使用用途は多岐に渡ります。代表的な例をあげると、婚姻届・出生届・住民票の発行申請・年金や国民健康保険についての手続き・会社に提出する各種資料(雇用契約書など)への押印があります。
認印を変更する・紛失した場合
認印の破損などで印鑑を変更したい場合や認印を紛失した場合ですが、認印はどこの機関にも登録手続きをしている訳ではないため、特に必要な作業はありません。上記でご紹介した手続きを別の認印でおこなったとしても問題ありません。再度オリジナルの認印の作成を専門の印鑑業者に依頼するか、緊急で必要な場合は100円ショップなどでも簡易的な認印は購入可能です。また、認印は複数所有しても問題ありませんので、自宅用・会社用と分けて使用するのがおすすめです。
シャチハタを認印として使えるか
日常的に使う印鑑としてシャチハタがありますが、一部認印として使用できないケースもありますので注意してください。シャチハタをはじめ浸透印は印面がゴム製で変形しやすいため、上記認印の使用用途でご紹介した役所手続きについてはシャチハタ不可のケースが多いです。会社での確認のための事務作業や郵便物の受け取りなどであればシャチハタでも問題ありません。
会社で使う印鑑との違い
会社で使われる印鑑にも実印・認印・銀行印があります。個人の印鑑との違いを見ていきましょう。
実印
個人実印は市町村の役所に登録をおこないますが、法人の場合は法務局へ代表者印の登録をおこないます。つまり、印鑑登録証明書の発行場所が異なりますので注意してください。また、個人の実印では氏名を刻印するのに対して、法人の実印では二重円の外側に会社名、内側に役職名を刻印します。
銀行印
個人の銀行印も法人の銀行印も、金融機関への登録に使うのは同様です。ただし、個人の銀行印が氏名を刻印するのに対して、法人の銀行印では二重円の外側(回文)に会社名、内側(中文字)に銀行之印などと刻印します。
認印
個人の認印では苗字や名前を丸い印影の中に刻印しますが、法人の認印は正方形の枠の中に会社名を刻印した角印を使います。
印鑑を作成する際の注意点
最後に印鑑を作成する際の注意点を解説します。
印鑑を兼用しない
実印と銀行印、銀行印と認印のように兼用してしまうと、管理があやふやになり偽造や悪用のリスクが高まります。印鑑を最適な用途で使用するために、目的に応じた印鑑をそれぞれ作成しましょう。
別々に保管する
同じ場所に保管をすると、間違った目的に使用してしまう恐れがあります。作成した印鑑はそれぞれ別の場所に保管し、混合しないように管理をしましょう。特に法人の場合は使用者の記録を取るなどして、丁寧な管理ができるよう体制を整えるようにします。
まとめ
実印・銀行印・認印の違いについてご紹介しました。普段の生活ではあまり意識して印鑑の使い分けをする機会は少ないかもしれませんが、重要な契約の際には相応しい印鑑を用意する必要があります。この記事を再度見直して、印鑑の使い分けの参考にしていただければ幸いです。