1人1本持つのが原則の実印ですが、「夫婦であれば別々に持つのではなく、同じ実印でも問題ないのではないか」と思われる方も少なくないでしょう。しかし、本来1人に1本の実印を2人で使っていると思わぬ問題点にぶつかってしまうこともあります。そこで本記事では、夫婦で実印を共有することについて解説します。
実印とは
実印とは、どのような印鑑のことなのでしょうか。実印にはサイズが決められていたり、登録できる内容が決められていたりするため、登録できるものについて知っておくことは重要です。実印の概要や、登録できる基準について確認しましょう。
実印とは、居住する市区町村の役所に印鑑登録した印鑑のことを指します。印鑑を役所に持っていき印鑑登録することで、実印として利用できます。実印は重要な契約などを行う際に必要とされ、印鑑自体が本人であることの証明になります。実印はさまざまなシーンで使用されるため、ここではどのようなシーンで使用されるか確認しましょう。
実印が必要なシーン
実印が必要とされるシーンはいくつかあります。たとえば、車を購入しローンを組む際に印鑑証明書の提出を求められることがあります。車を購入する際は多額のお金が支払いに使われるため、印鑑証明書が必要になります。ほかにも、不動産の契約時や銀行からお金を借りるとき、遺産相続するとき、保険金を受け取るときにも印鑑登録が必要です。
印鑑登録は住んでいる役所に行き、身分証明書と登録したい印鑑を持っていくと簡単に登録できます。役所は土日が休日なことが多いため、すぐに印鑑登録を行えない場合があります。印鑑登録証は急に必要になることもあるため、あらかじめ役所に行き登録しておくのが望ましいです。
実印のサイズ
実印のサイズは決められています。役所が指定する大きさのものでなければ登録できません。実印の印鑑登録できるサイズは、印影部分の大きさが8mm以上25mm以下と定められていることが多いです。大きすぎたり小さすぎたりする印鑑を役所に持って行っても、印鑑登録を受け付けてくれないため注意が必要です。
また、印影をきれいに押せない場合も印鑑登録できません。文字の部分が欠けていると正常に捺印できないため、印鑑登録する際はきれいに捺印できるか確認してから役所に行きましょう。
実印の内容
印鑑の名前は苗字のみや名前のみ、苗字と名前の両方の組み合わせなどどれでも申請可能です。フルネームの印鑑を作りたい方はご自身の本名をそのまま印鑑登録できるため、オリジナルのものを作るのがよいでしょう。
ただし、実印登録できない名前がいくつかあります。自分の名前以外の印鑑や本来の名前ではない肩書、イラスト入りの印鑑などは登録できません。
また、ゴム印やシャチハタなどの印鑑も登録できません。ゴム印やシャチハタは長年使用していると印面が劣化して印影が少しずつ変わるため、実印としてはふさわしくありません。
どのような印鑑でも実印として使用できるのか?
基本的には上記で説明したサイズや内容に問題がなければ、どのような印鑑でも実印として使用できます。
また、100均などで売っている安い印鑑でも印鑑登録はできますが、管理には十分注意する必要があります。
安い印鑑は大量に生産されており、第三者でも容易に購入できるデメリットがあります。安く購入できる反面、不正に利用されるデメリットがあるため、あまりにも安すぎる印鑑は実印として使用しないほうがよいでしょう。
実印は2人でも使える?
夫婦になると、実印を二人で共有したいと思われる方もいるでしょう。ここでは夫婦間で実印を共有できるかどうか解説します。
一つの印鑑を二人で使うのはOK
印鑑登録した実印を二人で共有する分には問題ありません。たとえば、夫の印鑑を実印として、妻がそれを使用しても法的に問題ありません。
ただし、一つの印鑑に対して二人の名前で印鑑登録はできないため、もしご自身の実印を作りたい場合は実印を分ける必要があります。
実印は一つしかないものと定義されているため、同じ印鑑で一度に二人で登録しようとした場合、役所の方に別々に分けてくださいといわれます。
印鑑登録は1人につき1つまで
印鑑登録は、1人につき1つまでです。複数の印鑑を印鑑登録できないため、ご自身の特別な印鑑を1つ持っておくのが望ましいです。よい印鑑を1つ持っておくとそれほど壊れる心配はないため、気に入った実印を印鑑登録しましょう。
実印を夫婦で分けるメリット
実印を夫婦で分けるといくつかメリットがあり、自分専用の実印を持っておくと非常に便利です。男性用と女性用では使いやすい印鑑がそれぞれ異なり、デザイン性も大きく異なるためそれぞれ分けるのがおすすめです。
男性の印鑑は、象牙で作られた高級感ある印鑑が人気です。女性の場合は、比較的軽くてスマートな印鑑が人気です。このような素材で作られたオリジナルの印鑑を購入しておけば、自分の好みの印鑑を所有できます。
夫婦向けの実印セットも販売されている
印鑑専門店のなかには、夫婦向けの実印をセットで販売しているところもあります。男性用の印鑑は少し大きめで重量感あるものが多く、女性用の印鑑は軽くてスマートな印鑑が多いです。デザインも少し違うため、結婚を機に購入される夫婦も多いです。
新婚夫婦になると男性女性それぞれ1つずつ印鑑を購入し、銀行印と分けて購入される方もいます。夫婦別の実印と銀行印を分けると3つ購入する必要がありますが、セキュリティー面や使いやすさを考えると3つ購入しても問題ないでしょう。
実印を共有する場合の問題点
夫婦で同じ印鑑で印鑑登録はできませんが、どちらかの実印を共有することは可能です。しかし、実印を共有することでいくつかデメリットがあるため、それらの問題点について知っておくことは重要です。具体的にどのような問題点があるか見ていきましょう。
なりすましの可能性
夫婦で印鑑を共有すると、なりすましのリスクがあります。どちらかの名前で印鑑登録し夫婦で共有することは可能ですが、夫婦間で承諾を得ずに勝手に印鑑を使用できるデメリットがあります。あまり夫婦間で相談もなしに勝手に実印を使用することはありませんが、可能性としてはゼロではありません。
勝手に実印を使用して新しい車を購入して、夫婦間でトラブルになる事例などもあります。このような問題を防ぐには、あらかじめ夫婦間で実印を分けておき、別々の印鑑を持っていくのがよいでしょう。
金融会社から信頼を得られない場合がある
実印を夫婦間で共有する場合、金融会社から信頼を得られない場合があります。金融会社や不動産会社と契約する場合は、連帯保証人の実印を求められることがあります。
夫婦がお互いに連帯保証人になる場合、状況によっては「実印をそれぞれ分けて捺印してください」との申し出がある場合があります。その際は今まで共有していた実印は使用できないため、別々の印鑑を新しく用意しなければなりません。
紛失のリスク
夫婦間で印鑑を共有していると、紛失するリスクがあります。もし自分専用の印鑑ならば自己管理しやすいですが、夫婦で共有している場合は印鑑を移動させる回数が増えるため、印鑑がなくなる可能性が高くなります。保管先を決めておいても、それぞれが違う場所に置きっぱなしにして、最終的には実印を紛失するケースが多いです。
緊急の際に使用できない恐れ
夫婦間で実印を共有していると、緊急の際に実印を使用できない恐れがあります。たとえば、夫が車の中に実印を入れたまま会社に出勤してしまった場合が考えられます。その際は妻が緊急で実印が必要になったとしても、使用できないためトラブルになる可能性があります。
まとめ
夫婦であれば実印の共有は問題ないと考える方が多いですが、2人で1つの印鑑を利用するのは思わぬ問題点にぶつかることがあるため、あまり推奨しません。本記事を参考に、実印は1人1つ作成されることをおすすめします。
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