はんこ(判子)の種類の中でも認印とシャチハタを使い分けるシーンに困ることがあります。「認印でお願いします」「シャチハタは不可」など相手側から指定された場合は深く考える必要はありませんが、自身の判断に委ねられている場合どちらを使用すれば良いのか迷ってしまいます。
そのためこの記事では認印の概要やシャチハタとの違いについて解説します。また認印をはじめ実印などの印鑑の素材や書体の情報にも触れています。
認印の概要
認印は一般的に個人の名前が入った印鑑のことを指します。日常の生活において、認印を押印することで「私本人が確認しました。認めます。」といった意思表明をすることになります。
一方、住居地を管轄する役所にて登録が必要な印鑑である実印は、実印を押印する際に印鑑証明の提出を求められることもあるほど、重要な印鑑で一人一つしか所有できません。賃貸や保険など重要な契約を取り交わすときに使用するものです。引っ越しで住居地を管轄している役所が変更になる場合は、住所変更の手続きをしたタイミングで印鑑登録は自動的に抹消されます。そのため新たな住居の管轄している役所にて改めて印鑑登録が必要です。このように使用用途も限られている実印と比べ、幅広く使えるのが認印です。利便性を考慮して、会社用や自宅用などと一人でいくつ所有しても構いません。
認印とシャチハタの違い
認印とシャチハタの違いについてそれぞれの特徴を述べながら違いを解説していきます。
シャチハタとは?
シャチハタは実はシヤチハタ株式会社の社名からきています。シヤチハタ製のネーム印、主に「ネーム9」が社会にひろがったことで、浸透印やネーム印がシャチハタと呼ばれるようになりました。浸透印やネーム印は、シヤチハタ以外にも、サンビー製やブラザー製のものがあります。
シャチハタ・浸透印の特徴は本体の中にインクを補充しておくことで、押印する際に朱肉やスタンプ台なしに押印できることです。その手軽さから、誰でもご家庭用や会社用などに一つや二つは常備させている方も多いことでしょう。
認印とシャチハタの使い分け
役所や会社など公的な手続きの際に使用する場合、認印を押印すれば基本的に問題ありません。一方シャチハタは会社内での事務作業や荷物の受領など、比較的に簡易なやりとりのシーンで利用することが多いです。
シャチハタが書類によっては使用不可とされることがあるのは、印面がゴム製で変形しやすいためです。
また印鑑には朱肉を使いますが、シャチハタはインクを使うため長期間保存する必要のある書類では、経年によってインクが薄くなるなどの懸念があります。
認印は朱肉。シャチハタはインク。
シーンによって使い分けが必要な認印とシャチハタですが、着色するための材料も異なります。認印は朱肉をつけて押印しますが、シャチハタは内蔵されてあるインクカートリッジにインクを補充する必要があります。シャチハタ・浸透印のインクがなくなったら、補充して引き続き使用できます。シヤチハタ・浸透印の補充に使うインクは、メーカーが指定する専用インクを使ってください。専用以外のインクを使った場合には、インク漏れやインクが固まるなど、最悪ネーム印が使えなくなってしまうので、必ずメーカーが指定する専用インクを使ってください。
認印とシャチハタの印影
認印やシャチハタの印影には基本的に名字だけを入れます。しかしながら、会社などで頻繁に使用することの多いシャチハタは同じ姓の方が複数人いる場合があり誰が押印したのかわからなくなることもあります。その際には、誰の印影か分かりやすくするため名字に加えて名前の一文字目を小さく入れることがあります。
認印とシャチハタ、それぞれのメリット・デメリット
認印とシャチハタの使用上のメリット・デメリットをまとめました。
認印
〈メリット〉
- 公的な書類など幅広く使用が可能
- 印面が劣化せず材質によっては一生もの
〈デメリット〉
- 印鑑はシャチハタに比べるとキレイに押印するにはコツがいる
- 朱肉やマットなど付属品が必要
シャチハタ
〈メリット〉
- 連続して押印が可能
- 朱肉やスタンプ台がなくてもキレイに押印できる
〈デメリット〉
- 公的な書類には使用できない
- 印面がゴム製であるため劣化する
- 専用インクでの補充が必要
- インクの浸透具合で印影の濃い薄いといった差が激しい
認印を使う場面
認印とシャチハタはどちらも日常生活で使う機会が多い印鑑ですが、それぞれメリット・デメリットがあります。認印は朱肉を付けて押印しますが、シャチハタはインクを内蔵したスタンプタイプです。その特徴から、公的な書類などに認印は使えてもシャチハタは不可というケースが少なくありません。たとえば次のような場面が考えられます。
認印を使うべき場面
市区町村の役所に届け出る公的な書類は基本的に「シャチハタ不可」としています。婚姻届、出生届、離婚届、転入届、転出届や税務署に提出する書類はシャチハタを押した場合、受け付けられません。各種保険の手続きなどもシャチハタは使えません。雇用契約書もシャチハタを不可とする企業がほとんどです。ほかにも会議の議事録など長期間の保存が必要な場合はシャチハタを不可としています。つまり、そのような場面では認印を使うことになります。
シャチハタでも対応可能な場面
ではシャチハタはどのような場面で使うことができるのでしょうか。宅急便などの受け取り伝票、回覧板の確認などにサイン代わりの「認印」として押すことは可能です。また会社の内部でやり取りする書類にシャチハタを使うケースもあります。シャチハタはその都度朱肉を付けずとも連続して使えるため、対応可能な場面では効率アップにつながります。
認印(印鑑)の材質(代表的な印材の種類)
認印を含め印鑑の材質にはさまざまなタイプがあります。それぞれの特徴をご紹介します。
象牙
はんこの印材なかでも昔から使われてきて、長期的に見ても劣化や変形しにくい印材です。乾燥にも強く、割れやひびが入ることもないため耐久性に非常に優れています。キメがとても細かいため、美しく印鑑の中でも最も高級な素材といえます。
象牙はワシントン条約により輸入数の制限があり、大変貴重な材料です。象牙を取り扱う業者は特別国際種事業者として登録しなければなりません。
オランダ水牛
水牛の角が原材料で、毛と同じタンパク質からできています。後述する黒水牛とは反対に白い光沢と透明感が特徴的で、女性に好まれます。
またオランダ水牛の中でも模様があるものとないものでランクが異なり値段も変わります。
オランダ水牛と聞くとオランダが原産国なのかと勘違いしそうになりますが、角の貿易拠点がオランダであったことから「オランダ水牛」と呼ばれています。
人間の髪の毛や爪の成分と同様のタンパク質からできているため、乾燥や紫外線を避けてケースに保管するようにしましょう。店舗では、乾燥防止のため彫刻面に椿油を塗っています。
黒水牛・天然黒水牛
こちらも水牛の角を原材料としています。オランダ水牛とは対照的に、漆黒のツヤがあり重厚さを感じるため、男性に好まれる傾向があります。象牙やオランダ水牛と比較すると値段は手頃で、人気の高い印材です。
黒水牛は真っ黒に染められたもので、天然黒水牛は天然の色味を活かした印材です。
柘(=アカネ)・本柘
上述した動物系の素材とは異なり、木材系の素材です。本柘は日本が原産国でデリケートな性質のため自生せず、苗木から植え替えや害虫の駆除など成長には人の手が必要です。柘は木材の中でも非常に硬い素材であるため印鑑の細かい彫刻に向いています。
アカネは本柘の廉価版のようなもので輸入品です。本柘に比べると密度は低いですが、印材では十分の硬度があります。
木材でできている印鑑は、使えば使うほど光沢が出て木目のツヤがきれいにみえます。しかしながらデリケートな素材で、象牙や水牛に比べると劣化が早く長期長期使用するためには、使用したあとは朱肉をキレイに拭き取るようにしましょう。
チタン
近年人気が出てきたチタンは金属の一種で、強度が高く、軽量であることが特徴です。一般的な金属素材のステンレスは錆びにくいことで有名ですが、湿度が高い場合や水気にずっとさらしていると錆びる可能性があります。一方チタンは海水などでもほとんど錆びることはありません。また金属アレルギーも起こしにくく、医療機器でも使われているため、印鑑としての使用でも安心です。
好みに応じて表面加工や、色が選べること点からも人気の印材です。
認印を作るときのポイント
認印は使う頻度が多くなることを考慮して作る必要があります。ゴム印やシャチハタに比べて「印面が変形し難い」ことが特徴なので、それに適した耐久性のある素材を選びましょう。また次のようなケースで迷うことが多いようです。
認印は名字だけ?フルネーム?
認印の刻印内容は基本的に名字だけを入れて作ります。ただし個人の印鑑なので登録する必要はないため、刻印内容は「フルネーム」や「名前」にすることも可能です。ちなみに外国人がアルファベットで名前を入れて作ることもあります。
同姓同名がいる場合は?
会社で使う認印は名字が一般的です。しかし社内に同姓同名がいたら混乱しかねません。そのようなときは、名字の下に添え字を一文字入れることで区別する方法があります。
印鑑のサイズ(直径)
認印・実印・銀行印それぞれのサイズについてご紹介します。
認印
一般的な認印のサイズは10.5mm~12mmです。実際のところはとくに決まりはありませんが、はんこを押印する欄のサイズはある程度決まっていることと、誰が押印したのかが一目瞭然であることが求められるため大きすぎる・小さすぎるのはよくありません。
10.5mm~12mmと少しの差があるのは、手の大きさなどで握りやすさや使いやすさを考慮すれば問題ありません。会社などでの使い分けとしては、一般社員は小さめのサイズ、役職者の方は大きめのサイズと使い分けている企業もあります。
実印
実印として使用する印鑑の一般的なサイズであれば、認印よりも大きいサイズを選ぶようにします。印鑑は数ミリの差でも握った際に太い・細い、を感じやすいです。認印のサイズ選びには慎重に手のサイズなどを考慮すると良いです。
女性が使用するものであれば13.5mmや15mm、男性が使用するものであれば16.5mmや18mmタイプがあります。
銀行印
認印と実印の中間くらいのサイズを選びましょう。12mm~13.5mmあたりが一般的なサイズです。
認印(印鑑)の書体
認印に使用する人気の書体はいくつかあります。書体の特徴についてご紹介します。
認印の場合には、パッと見て誰が押印したか分かったほうが良いので、古印体や楷書体が選ばれることが多いです。
楷書体
一画一画を崩すことなく丁寧に書いた筆文字で、書道で習う書体です。
パッと見て読みやすさがあり、認印で一般的に広く使われているのが楷書体です。
行書体(ぎょうしょたい)
行書体は筆の動きやスピードが感じられる印象です。一画一画がつながり楷書体に比べると少し崩れた書体で大人の雰囲気がでます。
古印体(こいんたい)
楷書体や行書体に比べると、横線や縦線が上下左右の対称になるようなデザインです。線に丸みがあり独特の雰囲気があります。
既製の認印でよく使われる書体です。
篆書体(てんしょたい)
左右対称で線の太さも均一、幾何図形的な美しさとともに、古代的な荘重さを兼ね備えています。
印相体(いんそうたい)
篆書体と形状は似ていていますが、ひと文字ひと文字がつながっているため、さらに解読が困難です。篆書体よりも線が太く、余白が少ないのが特徴です。
よくある質問
認印に関してよく「実印や銀行印とどう違うの?」という質問があります。
同じハンコ(印鑑)でも、住民票がある市区町村の役所に届け出て印鑑登録すれば「実印」となります。
また金融機関に口座を開設する際に登録すれば「銀行印」となります。
どこにも届け出ていないものを「認印」と呼ぶのです。
「実印を認印として使うことはできる?」と聞かれることもありますが、実印は重要な契約などに使用する印鑑なので、普段は厳重に保管していくことをおすすめします。銀行印も同様です。認印は日常的に使う印鑑として別のものを用意しましょう。
まとめ
シャチハタと認印のそれぞれの特徴や使用用途、それぞれの違いについて解説しました。シャチハタと認印の使用するシーンを理解しておけば、迷うことなく判断できます。また上述したとおり、認印・銀行印・実印にサイズや書体の決まりはありませんが、実印や銀行印は貴重なものです。複製されないためにも安価な既製品などではなくサイズや材質をわけ、一生もののはんこを作りましょう。