2022年10月21日 公開
2023年7月28日 加筆
いずれも会社で使う印鑑ではありますが、それぞれの印鑑についての定義や使用用途には違いがあります。
この記事では、角印や社印と呼ばれる企業の事業活動で使う印鑑の種類や違いについて、分かりやすく解説します。記事内では社印の作り方や各種角印のメリット・デメリットも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
印鑑の名称
まずは、会社で使われている印鑑の名称について、それぞれ整理していきましょう。角印、社印、社判、丸印の4つの印鑑をご紹介します。
角印:会社の認印
角印とは、印鑑を押印した際にできる印影(ハンコを押した跡)が四角い枠で囲まれている印鑑のことを指しています。
四角い印鑑全般のことを意味していますが、主に企業名を刻印したものが角印として広く使用されていることから、「社印」とも呼ばれています。
会社で使う印鑑は実印・銀行印・角印の3本セットになっていることが多いですが、その3本のうちの1本は角印(社印)となっています。
見積書への押印や領収書への押印など、日常的な業務に多く利用されていることから、会社で使用される印鑑の中で最も使用頻度の高い印鑑とも言えるでしょう。
角印は会社名が刻印されており業務に関する資料に頻繁に押印される機会がありますが、実印や銀行印のように役所や銀行に登録する印鑑ではありません。そのため近年では電子印鑑と使い分ける企業も増えて来ています。
社印:会社名が彫刻された角印
続いては社印についてです。
社印とは角印の中でも会社名が彫刻された印鑑のことを指しています。ただし、角印の主な用途が社印なため、一般的には「社印=角印」という認識が定着しています。
社印は見積書や領収書など、業務の中で確認が必要なされるような書類に押印されます。押印があることで「書類の内容を会社として確認をした」という意思表示でもあります。
個人でいうと認印に近い認識といえば、イメージしやすくなるのではないでしょうか。
それでも資料に社印を押印する理由は、対外的な信用を印象付けることができるからです。例えば、見積書に社印の押印がある書類と押印がない書類を比べた場合、押印がある方がちゃんとした書類である印象を受けるはずです。事業運営は他者との信頼で成り立っている部分もありますから、社印での押印は少しでも自社を信頼してもらうための手段にもなり得るのです。
社判=会社の印鑑
会社の印鑑を意味する言葉として、「社判」という言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか。
社判とは、企業活動の中で使われている印鑑全般のことを意味しています。社判の中には上記でご紹介した角印(社印)が含まれていますし、その他にも丸印(代表者印)・丸印(銀行印)・ゴム印といった印鑑も社判の一つとされています。
社判は意味する範囲が広く「会社の印鑑」と認識する人が多いのですが、それゆえに会社によって社判が指す印鑑の種類が異なる場合があるので注意してください。
ある会社では社判が住所印を示しており、またある会社では社判が角印を示しているケースもあります。上司などから社判を押印するよう指示された際は、何の印鑑を意味しているのかを確認すると良いでしょう。
丸印=法人実印・銀行印
丸印とは、印鑑を押印した際にできる印影が丸い枠で囲まれている印鑑のことを指します。
会社で使用される印鑑3本セットのうち、1本は角印で、他の2本は丸印であることがほとんどです。2本の丸印はそれぞれ使用用途や意味が異なり、1つは会社で最も重要度の高い代表者印、もう1つは金融関係の手続きに利用する銀行印となっています。
事前に作成した印鑑を法務局にて登録手続きをおこなうことで、会社実印として会社の代表者の意思・決定であることを公的に証明できるようになるのです。そのため、重要な契約を結ぶ際は、印鑑を登録した法務局で取得できる「印鑑証明書」を契約書の押印とともに提出を求められる場合があります。会社実印は最も重要な印鑑であり、紛失や盗難に遭わないよう管理に十分気を配るべきものであることが分かりますよね。
角印と丸印の違い
会社の印鑑として重要度の高い印鑑は角印1つと丸印2つです。両者の違いを確認しておきましょう。
角印
角印は日常業務での使用が多く、個人の認印のような役割をする印鑑です。会社設立の際には必要ないため、必ずしも作成しなければならない印鑑というわけではありません。
見積書や請求書にきちんと角印の押印されていると取引先やお客さんからの信頼感を得られますし、重要な契約書に使用する丸印と使い分けることで、丸印の使用頻度が減り偽造などのリスクを避けることができるのです。
角印の使用用途としては、丸印を使用する重要な書類以外の一般的な契約書に対する押印です。新聞・ウォーターサーバー・コーヒーマシーンなどの契約には角印の押印で問題ないでしょう。
丸印(代表者印・役職印)
一方丸印は会社の重要な契約の際に使用する印鑑です。会社にとって最も重要な実印と、金融機関への届出に使う銀行印に分けられます。
特に代表者印は法務局に登録をすることで、代表者の意思・決定を法的に証明できる実印となります。実印は流出や偽造などで悪用されるリスクが最も高い印鑑でもあります。適切に管理するには会社にとって重要な契約以外では使わないよう、できるだけ使用頻度を減らすため、銀行印など他の印鑑との併用を避けるなど、取り扱いに注意が必要です。
代表者印の使用用途としては、株式発行や不動産取引、機械のリース契約など会社の基幹業務に関わる契約への押印や官公庁に届出をする際の押印があります。
また、会社の契約とお金のやりとりについては分けて管理をするために、銀行などの金融機関に届け出をする印鑑は代表者印とは別の丸印(銀行印)を別途準備することをおすすめします。
角印の捺し方
角印の捺し方ですが、会社名や会社住所の記載に重なるように押印するのが一般的です。具体的な位置としては、会社情報が記載された右側に押印します。会社情報の最後の文字と印影の中心を重ね、会社情報の文字の上下と印影の上下のバランスを揃えると、綺麗に押印することができます。
ただし、角印の押印位置には正式な規定などはありません。会社の慣習や取引先の押印方法に合わせるようにしましょう。
丸印の捺し方
丸印の捺し方ですが、会社名や会社住所の記載に重ならないように押印します。理由としては、丸印の場合は印鑑証明書の印影と照合をする必要があるためです。
角印の場合は照合の必要がありませんし、偽造や悪用をされないようにする必要があるため、文字に重ねての押印をおこないます。また、書類によっては丸印と角印の両方を押印するケースがあるかもしれません。その場合、丸印は文字の右側に押印し、角印は会社情報が記載されている中心に印影の中心を合わせるように押印します。両方を押印することになったとしても、丸印は照合ができる位置、角印は偽造ができない位置に押印することは変わりません。
角印とは
角印は一般的に四角い形をした印鑑で、朱肉を付けて書面に押したときに付く印影も四角になります。個人的に使われることは希で、会社で使う印鑑を実印、銀行印、角印の3本セットとして揃えることで知られます。
角印を「社印」や「角判」と呼ぶこともありますが、社判(しゃばん)と混同しないように注意が必要です。社判とは会社で使う印鑑全般の総称であり、角印(社印)はその一つということになります。
角印の使用シーン
会社における代表者印は会社設立時、法務局に届け出て印鑑登録をしたものです。会社の実印に当たり「丸印」とも呼ばれます。
角印は会社における認印に当たり、特に登録する必要はありません。
代表者印は不動産取引など重要な場面で使われます。
対して角印は社内の通知文書や取引先に渡す見積書や納品書、請求書、領収書などに使います。角印は該当業務に関わる従業員が押します。
角印を作成する際のポイント
角印について法的な規定はありませんが、会社の規定があれば、それに合わせて作る必要があります。
角印のサイズ
角印は一般的に一辺の長さが21mmから24mm程度の正方形になります。ただ一辺の長さが21mm〜30mmに収まれば、ほぼどのような書類にも押印することは可能です。
角印の刻印内容
刻印内容については「株式会社○○之印」といったように、会社名や屋号を彫ります。会社名や屋号の後に「之印」あるいは「印」を付けることが多く、文字数とのバランスを悩むところです。どのような配置にするか迷った場合は印鑑専門業者に相談してみましょう。
角印に適した書体
読みにくい書体を使えば偽造される可能性が減り、誰でも読めるような分かりやすい書体にすれば偽造されるリスクが高くなります。最も読みにくいとされる印相体(いんそうたい)は個人の実印にもよく使われる書体として知られます。篆書体(てんしょたい)は印相体の次に読みにくいといわれますが、左右均一で美しさもあります。印鑑全般に適した書体で、角印にもよく使われます。丸みを帯びた古印体(こいんたい)は日本独自の書体で、読みやすさから認印に使われることが多いといわれます。
角印は社印なので、偽造されるリスクはできるだけ回避しながら、会社の認印という性質から読みやすさも追究しなければなりません。そうした点を考慮しながら適した書体を選ぶとよいでしょう。
角印(社印)の作り方
角印の作り方のポイントをご紹介します。角印を作る際に検討すべき点はサイズ・刻印・書体・素材の4つです。
サイズ
角印のサイズについては正式な規定はありませんから、会社の裁量によって作成することができます。ここでは一般的な角印に採用されるサイズをご紹介します。
角印の一辺の長さが24mmで作成されることが多いのですが、21mm〜30mmの間に収まるようにすると、どのような書類にも対応した押印ができるようになります。目安としては、角印に刻印する社名が10文字前後なら24mm、社名が15文字以上なら27mm、社名が25文字以上なら30mmを選ぶと社名に合った最適なサイズの角印を作成できます。店頭ではお客様の社名の文字数などに応じて最適な印鑑サイズを提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。
刻印内容
会社名や屋号を角印に刻印します。角印の場合、3行程度に配字することの多いため、文字数によっては社名や屋号の後に「印」「之印」と加えることもありますので、好みやバランスで提案いたしますので、その際にご要望もお知らせください。
彫刻する方向は、基本的には縦書きにすることが多いのですが、最近は英語の社名が増えてきた影響で横書きにすることも増えています。社名が漢字など日本語のみの場合は縦書き、アルファベットを使っている場合には横書きにする読みやすく、また印影のバランスもよくなります。
書体
刻印する内容が決まったら、デザインとなる書体をえらびます。読みづらく偽造がされづらい順に3つの書体をご紹介します。
印相体(いんそうたい)
最も読みにくい書体が印相体(いんそうたい)です。
篆書(てんしょ)を基礎にして意匠化した書体で、主に個人の実印に多く使用され、印鑑独自の書体です。
文字の線の流れが四方八方に広がっているデザインで、刻印の外枠との接点が多い特徴があります。線が曲がっているため偽造がしづらく耐久性に優れた書体です。末広がりのようなデザインから、縁起が良いと書体と言われることもあります。
篆書体(てんしょたい)
続いて読みにくい書体は篆書体(てんしょたい)です。
左右均一な線幅が特長。幾何図形的な美しさとともに、古代的な荘重さを兼ね備えています。実印に限らず、すべての印に適しています。特に役職印・角印にはこの書体が多く使われています。
古印体(こいんたい)
丸みを帯びた字体が特徴の古印体(こいんたい)です。奈良時代に生まれた書体で、隷書を基本とし、そこに丸みを加えた書体です。
この書体は日本独自のもので、多くの既成認印に使われています。主に認印に多く使われております。
印材(印鑑の素材)
角印や丸印は、刻印の外枠や文字が欠けると照合ができなくなるため効力が失われてしまいます。長期間に渡って使用できる、丈夫で耐久性のある素材を選ぶことが大切です。
象牙
“印鑑(はんこ)の王様”とも呼ばれるほど、「はんこ」の中では最高級の素材と言っても過言ではない印材です。高い耐久性、重量感、光沢があり、朱肉とよく馴染みますので、使うほどに愛着がわく事でしょう。また、象牙のはんこは、ワシントン条約により輸入が制限されております関係上、希少価値が高くなっております。
象牙の販売には「特別国際種事業者」の届け出が必要です。
チタン
近年印鑑の素材として人気が高まっている素材です。金属性の見た目から高級感や重厚感を感じられるだけでなく、ほとんど摩耗しない素材であることから他の自然素材に比べて高い耐久性があります。チタンは医療器具にも使われており、金属アレルギーを起こしにくい素材でもあります。
また、金属質な見た目に反して、印鑑の馴染みがよく押しやすく、印影もきれいにうつるので、使いやすい印材でもあります。
オランダ水牛
水牛の中でも特に硬質で粘りがあり、より優れた印材として知られている南アフリカを原産とする 印材です。
名前の由来はオランダ原産というわけではなく、オランダを集積地 として世界に輸出された為です。印材の他には洋服のボタンや櫛の材料として 世界中で愛用されています。
「はんこ屋さん21」ではフ(模様)が少ないものをオランダ水牛、フがまったくないものを白オランダ水牛として取り扱っております。
黒水牛
オランダ水牛同様、水牛の角を加工した印材で丈夫で長期の使用に耐えられる東南アジアを原産とする印材です。
通常、黒水牛というと真っ黒に染められた印材ですが、天然黒水牛は、染めることなく、天然の色そのままですので、黒水牛と比べると表面にうっすらと模様がうかび上がっているのが特長です。
本柘
植物性の印材として、古くから愛用されています。木材の中では密度が高く硬質であり、使用するほどに、艶が出て見た目にも美しい印材です。
本柘は主に日本産で島柘とサツマ柘とに分類され、現在はサツマ柘が主流になっています。柘に比べると黄色っぽく艶があるのが特長です。柘は主に東南アジアから輸入品でシャム柘とも呼ばれています。木目が美しいのが特長です。
個人事業主やフリーランスの角印
個人事業主やフリーランスの方でも角印を使うメリットがあります。個人事業主やフリーランスの方でも企業に対して見積書や請求書を発行することが多々あるかと思います。その際に角印による刻印が入っているだけで良い印象を与えられ、信頼性を高めることができるのです。角印の作成は必須ではありませんが、個人との取引では未だに不安視されることが多いため、少しでも安心してもらうための相手への心遣いと考えると良いでしょう。
角印の種類とメリット・デメリット
角印には印鑑・シャチハタ・電子と3種類あります。それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
印鑑
印鑑は本記事でもご紹介した素材や配字をオーダーメイドで彫刻するハンコです。固くて丈夫な象牙や水牛、チタンといった印材は劣化しにくく高級感があります。
実印や銀行印として届け出、登録するため。大切な書類に押印するのは印鑑とするケースは多く、シャチハタや電子印鑑はNGとする書類も多くあります。
浸透印・シャチハタ
インクが本体に内蔵されているハンコです。ハンコを朱肉につける手間が省け、連続して捺印ができるメリットがある一方、印面がゴムなどの素材出できているので、印鑑と比べると短期間で変形したり欠けてしまったりするデメリットがあります。
浸透印のことを指して、よく「シャチハタ」と言いますが、これは主に浸透印を作るメーカー「シヤチハタ株式会社」の社名で、同社の商品が広く世の中に広がったため、シヤチハタ製の浸透印だけでなく浸透印全体のことを「シャチハタ」と呼ぶ人もいます。
電子印鑑
パソコン上で管理できるハンコで、主にPNGやGIF、JPGなどの画像ファイルの形式の印影のことを指します。パソコン内のファイルに捺印できる、大きさを自由に変えられる、インクの補充が必要ないといったメリットがありますが、電子ファイルに変換しなければ使えない、白黒プリントすると印鑑の色が黒く印刷されてしまうというデメリットもあります。
最近では、文書の作成・管理や押印までを行うことのできる電子契約サービスも普及してきました。
角印・社判・丸印の使い分け
社判は会社における印鑑の総称です。角印は「社印」とも呼ばれ、会社における認印なので一般社員でも押印することができます。しかし「丸印」と呼ばれる代表社印は会社における実印なので、会社にとって重要な契約書に会社の代表が押印するものです。そのような使い分けは周知徹底する必要があります。
まとめ
角印(社印)について解説しました。会社で使われている印鑑には種類が複数ありますが、機能や役割に応じた違いがあります。記事内でご紹介した角印の作り方のポイントを、ぜひオリジナルの会社用印鑑の作成の際にお役立てください。