「印鑑の書式で印相体と篆書体のどちらにするかで迷っている」という人もいるでしょう。どちらも似ている書体なので、なおさら悩んでしまいますよね。しかし、印相体と篆書体にはそれぞれにメリットがあります。メリットを比較し、自分に合った書体を選ぶのが大切です。今回は、印相体と篆書体について紹介します。
印相体と篆書体の特徴
印相体と篆書体の特徴は、次のとおりです。
- 印相体は印鑑のためにつくられた書体
- 篆書体は日本の紙幣にも使われている書体
それぞれ詳しく解説します。
印相体は印鑑のためにつくられた書体
印相体とは、印鑑のためにつくられた書体です。篆書体をベースにつくられた書体でもあり、漢字やひらがな、カタカナを問わず作成できます。具体的には、文字の線がさまざまな方向に枠まで広がっており、文字と印鑑の枠が接する部分が多いのが特徴です。
印相体の他に、吉相体や八方篆書体とも呼ばれており、風水や印鑑の姓名判断では印相体が使われます。
篆書体は日本の紙幣にも使われている書体
篆書体は、日本の紙幣の印影である「総裁之印」と「発券局長」にも使われる書体です。日本最古と呼ばれる漢委奴国王の金印も、篆書体を用いて作られています。印鑑にもよく使われる書体ですが、印鑑の場合は篆書体ではなく印篆と呼ぶのが正確です。
印相体を選ぶメリットとデメリット
印相体を選ぶメリットとデメリットは、次のとおりです。
- 他の書体と比べて欠けにくい
- 縁起が良い
- 偽造されにくい
- 読みにくいのがデメリット
それぞれ詳しく解説します。
他の書体と比べて欠けにくい
印相体は、他の書体と比べて欠けにくいのがメリットです。印鑑の中でも実印は、一度欠けてしまうとそのまま使用することができません。
それは、印鑑登録の際に印影が登録されており、印鑑証明書に掲載されている印影と実印の印影は同じである必要があるからです。認印であればそのまま使用し続けることも可能ですが、常識的には推奨できません。
印相体の印鑑であれば欠けにくいので、実印であっても改印手続きなどをせずに長く使い続けられる可能性があります。そのため、一度作った印鑑を破損させずに長く使い続けたい人にもおすすめです。
縁起が良い
印相体は「吉相体」とも呼ばれており、名前のとおり縁起が良い書体として知られています。縁起が良いといわれるゆえんは、文字が外枠に接しており外へ伸びるようなデザインになっているためです。
また、印影の丸い枠に文字が詰まっている点も縁起が良い要素とされています。他の書体と比べて、大きくて堂々と見えるのもポイントです。縁起が良いとされる点がたくさんあることから、日本人の「大切な物や場面の縁起を大切にしたい」という伝統や風習から培われた書体ともいわれています。
そのため、印鑑に開運の効果を持たせたい人にも印相体はおすすめです。
偽造されにくい
印相体は、偽造されにくい利点もあります。偽造されにくい理由は、書体が複雑であるためです。偽造の難しさから、銀行印や実印などの重要な印鑑に採用されやすい書体でもあります。
読みにくいのがデメリット
印相体は偽造されにくい一方で、読みにくいのがデメリットです。楷書体や行書体であればひと目で文字を判読できますが、印相体を読み取るにはよく見る必要があります。文字によっては複雑さが増し、じっくり見ても判読できない可能性もあるでしょう。
そのため、偽造をそこまで意識する必要がない認印には向きません。また、読みやすさを重視する人にも向かない書体です。
篆書体は可読性が低く偽造や盗用に強いのがメリット
篆書体は印相体と同様に可読性が低く、偽造や盗用に強いのがメリットです。篆書体は、縦長かつ文字の太さが一定で、横字は水平かつ縦字が垂直になる書体です。左右対称の書体でもあり、印鑑だけでなく書道で目にする機会が多い書体でもあります。
また、パスポートの「日本国旅券」の文字などにも使われているほど、偽造や盗用防止の効果が期待できる書体です。そのため、実印のような偽造を防ぐべき印鑑と相性が良いといえます。
しかし、可読性の低さはデメリットにもなり得るもので、ひと目で文字を判読するのは難しいでしょう。読みやすい印鑑を作りたい人には向いていません。
印相体と篆書体ならどちらを選ぶべき?
印相体と篆書体のどちらを選ぶべきかは、人によって異なります。それぞれの書体のメリットとデメリットを見比べ、どのような人に合っているかを見てみましょう。
書体 | メリット | デメリット |
印相体 |
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篆書体 |
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印相体と篆書体は、共通しているメリットとデメリットが多いです。印相体は縁起が良い書体なので、運気も考慮して書体を選びたい人に向いています。篆書体は定番で人気の書体なため、なじみのある書体を選びたい人におすすめです。
可読性が低いのはどちらも同じですが、比較すると篆書体のほうが読みやすいといえます。印相体は太字なのに対し、篆書体は細字での作成も可能だからです。そのため、読みやすさを意識するなら篆書体を選ぶべきといえるでしょう。
また、市区町村によってはまれに印相体の実印登録ができないケースがあります。前もって市区町村に問い合わせ、実印登録可能かを確認した上で書体を選ぶとスムーズです。
印相体や篆書体以外に選択肢に含まれる書体
印相体や篆書体以外に選択肢に含まれる書体は、次のとおりです。
- 楷書体
- 古印体
- 隷書体
それぞれ詳しく解説します。
楷書体
楷書体は、明確で整った形状が特徴の書体で、特に学校教育や公的な文書に広く使用されています。この書体は、文字が一つ一つはっきりしていて、読みやすさが非常に高いです。楷書体は、正しい筆順で丁寧に書くことが求められ、筆記体や行書体と比べて、より形式的で堅実な印象を与えます。
古印体
古印体は、奥ゆかしい墨塗や欠け、途切れが特徴の書体です。日本漢字をもとにした印鑑用の書体であり、可読性に優れています。なじみのある書体なのもポイントです。可読性を重視したい人や、見慣れた書体の印鑑を作りたい人に向いています。
しかし、可読性が高い分、偽造に弱いという欠点もあります。実印などの重要な印鑑に用いるのは避け、認印のような読みやすさを求められる印鑑に使うべきでしょう。
隷書体
隷書体は、波打つような運筆で横長の整ったバランスが特徴的な書体です。日本銀行券も隷書体で書かれているため、書体としての身近さやなじみ深さがあります。一見すると現代文字のようですが、実際は紀元前から続いている古い書体です。そのため、文字によって形状が異なるケースもあります。
古印体と同様に可読性に優れているため、認印などで読みやすい書体にしたい人におすすめです。一方で偽造に弱いため、実印などの重要な印鑑には避けるのが賢明といえます。
まとめ
今回は、印相体と篆書体について紹介しました。似ている書体なので選ぶ際に迷ってしまいがちですが、それぞれにメリットがあります。
例えば、印相体は縁起が良い書体として知られているのが特徴です。一方で篆書体は、印相体と比較して可読性に優れており、定番で人気の書体であることが利点といえます。欠けにくさや偽造のされにくさはどちらも持つメリットなので、書体独自のメリットで選ぶのがおすすめです。
また、印鑑には印相体や篆書体以外にもさまざまな書体があります。「印相体や篆書体は自分の好みではない」と悩んでいる人は、太枠篆書体や古印体などの書体も検討してみてください。